不眠症

1.1 不眠はつらいですよね

 

そもそもギリシャ神話にヒプノス[Hypnos]という眠りの神が出てくるように、古代から人類につきまとう問題として不眠があったことは、容易に想像できます。また、昔の古くから 拷問や刑罰として、断眠つまり「眠らせない刑」というものがあったようで、不眠は人間にとって大きなストレスになるわけです。

 

なんたって睡眠は、性欲、食欲とともに人間の三大欲求の1つに数えられるだけあって、とても大切で、私たちにとってとても心地良いものです。不眠とはその睡眠のトラブルですから、困ってしまうことがたくさん出てしまうでしょう。具体的には、昼間にイライラや疲労を感じストレスもたまるでしょうし、集中力、意欲、記憶・学習能力、創造性、運動能力、免疫力などが低下してしまうわけですから、よいことはないですよね。

 

1.2 不眠は多くの方が悩まれている問題です

 

現代社会で5人に1人は不眠で悩んでいるとも言われています。でも実際の話、4時間寝るだけで満足する方もいますし、8時間寝ても満足しない方がいますので、一概に睡眠時間の長さだけで不眠症とはいえませんし、睡眠の内容(質)の問題もあるわけですよね。ですから「眠れない」と言うだけでなく、「眠りの質が悪い」と言う問題も含まれてくると、実際、悩んでいる方はかなり多いと思います。

また、想像に難くないでしょうが、年齢とともに不眠の頻度は増えていくものです。高齢者では、睡眠時間そのものが5-6時間しか取ることが出来ないことが多いので、悩まれている方も多くいらっしゃいます。このような場合、睡眠時間が短いということだけでお薬などもいただくのも、よくないかもしれません。睡眠に関してよく理解したほうがいいですよね。

 

1.3 睡眠にも質というものがある

 

後ほど、睡眠の仕組みのところでもう少し詳しくお話をしようと思いますが、ここでは睡眠には二種類あることとその質(内容)が違うことをご理解いただければと思います。

一つ目はレム(REM)睡眠といって、簡単に言うと体の中で普段立ったり座ったりしているとき、仕事をしているときに使う筋肉を休める睡眠です。頭は働いているので、夢などを見るわけです。もう一つがノンレム(nonREM)睡眠と呼ばれるもので、レム睡眠とは異なり、今度は脳を休める睡眠なのです。まあ、夢も見ないでどっぷりと寝ているわけです。この二つの睡眠が組み合わさってワンセットとなり、このセットが睡眠中に繰り返されるのです。この二つの組み合わせをコントロールしているのが脳の中の自律神経という中枢なんです。

 

夢を見ているのはレム睡眠で多いのですが、冒頭でお話したギリシャ神話の眠りの神であるヒプノスは夢の神であるモフェウス(Morpheus)の父だそうです。

 

1.4 不眠にもいろいろなタイプがあるのです

 

不眠といってもいろいろなタイプがあるのです。大きく分けて三つでしょうか。

 

まずは「入眠障害」と呼ばれるもので、なかなか眠りに入れないパターンです。20歳以上の国民の8.1%の人たちが、入眠障害で悩んでおり、不眠全体の中では二番目に多いものです。この入眠障害は年齢によって起きやすさの差はありません。つまり、子供から、お年寄りまでこの入眠障害の可能性があるのです。

 

次に不眠症の中でもっとも多いものですが「中途覚醒」と呼ばれるもので、寝ている途中で目が覚めて、それから眠れなくなってしまうタイプです。実に、日本人成人の15%もの人が、この中途覚醒で悩んでいると言われています。先の入眠障害は年齢によってとくに起きやすいとか言うことはないのですが、このタイプの不眠は中高年の年代に多いとされています。夜中にトイレで目が覚めて、なんだかそのまま眠れなくなって、テレビや本を読んでしまう・・そして気づいてみたら、「ヤバイ!もう朝だ)」と言うパターンがありますよね。それを引きずってか、その日は昼から眠くなるし、仕事の能率なども悪くなり、良いことがないということになりかねません。

 

さて、最後は「早朝覚醒」と言われ、読んで字の如しです。頻度が一番少ないといわれていますが、さきの入眠障害とあまり差はなくて、日本人成人の約7.9%がこの早朝覚醒で悩んでいるそうです。これは、眠りにつくにはさほど問題はないですが、朝早くにどうしても目覚めてしまうタイプです。まだ明るくなるかどうかのころで、新聞屋さんなどの自転車の音を聞いたりしちゃうわけです。もう一回眠ろうと思っても、眠ることが出来なかったり、眠り自体が浅く熟睡感を得ることの出来ないわけです。この早朝覚醒がある方には、うつ病をはじめとする精神的疾患をわずらっていることが多く見受けられます。また、老年者にもよくみられる不眠症のタイプです。若い方でこのパターンの不眠症があるようなら、神経科の受診を考えたほうがいいかもしれません。

 

1.5 不眠の原因ってわかっているの?

 

いろいろな原因が不眠には考えられていますから、以下に有名なものを挙げますね。だけれど、最初に述べたごとく、これらがすべてではなくて、なんとなく「体質」「年齢」などということで片付けられてしまっているものが多くあることを知っていてくださいね。

 

1.緊張して眠れない!興奮して寝られない!

目前に迫った会議や重要なことが気になって眠れなくなってしまうのですよね。大なり小なりみんな経験していることですね。気持ちが高ぶって寝られないですよね。今日はいろいろな人と話をして、こんなことがあった、あんなことがあったなどと思い起こしているとね。実はこのあたりは今回お話しする自律神経と密接な関係があるのです。

 

 

2.からだの調子が悪くて眠れない、起きちゃう

肩こりや腰痛などでも、ふだんでもそうですが、同じ姿勢をしていると痛みやコリがひどくなるので、眠りが浅くなることがありますよね。また、神経痛などがある方は明け方が痛くなる傾向があります。すると早く起きちゃうわけです。

さらにご高齢の男性では前立腺肥大などで、尿にたびたび起きてしまったりすることもあります。蕁麻疹やアトピー性皮膚炎などで皮膚がかゆいときにも、ぼりぼりやって眠りが浅くなる人もいますね。

 

 

3.精神疾患で寝られない

精神疾患の人は、そのほとんどが不眠を訴えます。有名なのが「うつ状態」の時ですが、不安神経症や統合失調症などでも不眠は多い症状です。この場合には、先に述べたとおり早朝覚醒といって朝早くに目が覚めてしまうことが多いようです。

 

4.カフェインなどの薬?

緑茶やコーヒーなどのカフェインがたくさん入っているものを口に入れると、体の中でカフェインが頑張ってしまい、どうやっても頭が冴えてしまい、眠れなくなってしまいますよね。

カフェインはアルカロイドという物質なのですが、その一番有名な作用が目を覚ます「覚醒作用」ですから、当然と言えば当然ですよね。このアルカロイドは睡眠を調節する主役である自律神経の一つである交感神経の興奮作用を持っているんです。

 

5.寝具が合わない!うるさくて眠れない!(環境要因的な不眠)

車の走る音や工事の騒音、笑い声などの外からの雑音や、一緒に寝ている人のいびき、歯ぎしりなどの騒音は、明らかに眠りを妨害しますよね。また、枕や布団といった寝具が身体に合わないと寝られませんよね。

 

1.6 睡眠時間ってどのくらい必要なの?

 

最適な睡眠時間は6時間30分から7時間くらいだと言われています。しかし、これはすべての人の当てはまるわけではなく、睡眠時間にはすごく個人差があります。短い睡眠でも熟睡感とスッキリした目覚めが得られるかたをショートスリーパーと呼んでいます。このような方たちも実は日中まどろんでいることがあるらしいのです。つまり、無意識のうちに睡眠時間の不足を補っているのでしょうね。短い睡眠時間で有名なナポレオンも時々昼間はぼやっとしていたようです。

逆に、「8時間以上は寝ないと・・」という長時間の睡眠を求めるロングスリーパーの方もいます。しかし、無理に睡眠時間を長くしても、逆に頭の働きが悪くなることもわかっています。

このような睡眠時間の個人差は、いろいろな原因で起きるようです。ですから改めて考えると、不眠と言うのは、一概に睡眠時間の長短ではないことがわかりますね。のちほどもう一回お話します。

 

一日の時間の中では、夜中の12時までには眠りにつき、午前3時くらいまでは寝るのが良いのですが、この時間が睡眠のゴールデンタイムと言われています。この時間に体の成長や老化防止の成長ホルモンが多く出ますし、皮膚をつくり出し、若々しさを保つための皮膚のやや深いところにある細胞(基底層と言われるところにある細胞)の細胞分裂ももっとも活発になるそうです。

 

2.1 自律神経って何?

 

この章では不眠と自律神経の関係についてお話しますが、そもそも自律神経ってたまに聞く名前だけどいったい何なのでしょうか?わかりそうで判らない名前ですよね。

 

たとえば、僕たちの体の中でとても重要な心臓は、不思議なことですが自分たちの意識とは関係なく勝手に動いていますよね。そして、緊張すると鼓動が高鳴ったり早くなったりしますよね。この心臓のリズムを司っているのコントロールセンターが自律神経系のシステムなのです。

 

つまり、自律神経は一言でいうと、心臓などをはじめとする内臓、血管、あるいは汗などを出すところ(汗腺)など内臓すべての働きをコントロールして、自分の意識とは関係なく体内の環境を整える神経なのです。手足の運動を行ったり、手足からの感覚を感じる神経(感覚神経)などと違って、私たちの意思とは関係なく独立して働いているのです。あたりまえのようですが、内臓や血管を私たちの意思で自由に動かす事は出来ませんものね。反対に、意識しなくても呼吸をしたり、食べたものを消化するため胃を動かしたり、体温を維持するため汗をかいたりするのは、自律神経があるからです。

 

自律神経は交感神経と副交感神経という二つのシステムで構築されているのです。この両方の命令系統をもつ自律神経は全身に張り巡らされているわけで、体を知らないうちに調節しているわけです。

ここで交感神経と副交感神経の役割分担ですが、動物的な感覚でお話しますと、何かと戦っているときに働くのが交感神経なのです。黒目が見開き、心臓は高鳴り、血圧は上がり、汗をかき、トイレなど行く時間はないので、おしっこをする気にもならず、腸の動きは止まっているのです。一方、副交感神経はその逆ですから、これが主に働いているときは、ボサーっとしていて、脈も速くなく、汗もかくことはなく、眠くなったりするわけです。忙しい時間をすごした後にほっとすると、急にトイレに行きたくなったりもしますよね。副交感神経は戦闘ではなくお休みモードに働く神経系なのです。この二つの神経が体中の臓器にも行って、バランスを持って働いて、内臓などの動きが外の状況に対してちょうどうまく動くように調節しているのです。

 

また、感情、情緒などのインプットが入ってくる大脳辺縁系というシステム(人間の本能みたいなのをコントロールするところで、三大欲にかかわるところです)は、自律神経の中枢の周りを取り巻いていて、密接に関係しています。ですから、まずいことをしたり、緊張したりする、または、きれいな人を見たりすると、辺縁系が刺激されて(人間の本能を刺激されるのでしょうか)、すると自律神経の反応として、汗をかくとか、ドキドキする・なんとことが起きるわけですよね。このように辺縁系と自律神経は密に連絡しあっているんです。

 

2.2 自律神経と不眠の関係

 

自律神経には交感神経と副交感神経があると言いました。その副交感神経が優位になること、つまり「脳も体もリラックスしていること」そのものが睡眠の本質なわけです。また、副交感神経が優位にならないと睡眠の状態に入れなかったり、良い睡眠を得ることが出来ないと言うことになるわけです。

 

前のパートの「不眠の原因」として述べた「興奮、緊張などによる不眠」は完全に交感神経が優位なままで、いつまでも副交感神経の働きが不十分な状態になっているからなんです。

また、うつ病などでも不眠が起きると言いましたが(むしろ朝早く起きてしまうのが多いようです)、これもやはり自律神経のバランスの乱れから来ているものと考えられています。

 

また、不眠の治療のひとつとして、ハーブなどのアロマを嗅ぐと言うのも有名ですが、これも自律神経に影響をするわけですよね。良い香りをゆったりとかぐことが出来れば、自然と副交感神経に働いてくれそうな気がしますよね。

 

このように、不眠とは自律神経のアンバランスのそのものだと思ってよいと思います。

 

2.3 自律神経失調症ってよく聞くけど

 

よく聞く言葉ですよね、「自律神経失調症」って。でも、なんだかどんなとらえどころのない病名ですよね。僕は、自律神経失調症の患者さんに病状を説明するときに「自律神経失調症って、女性の更年期障害に似たようなものなのです」とよくお話します。

つまり、更年期障害の体験記を聞けばわかるでしょうが、症状は、「めまい」「ホットフラッシュといって急に暑くなったり、汗をかいたりする」「メンタルにいらいらする」「動悸がする」「血圧が上下する」などですよね。

つまり、心臓のリズムを司ったり、汗の量をコントロールしたり、血管の太さや流れ具合を司ったり、おなかの動き(便秘など)を司ったりするのが自律神経ですから、そのアンバランスを来たした状態ですよね。そもそも自律神経が「自分の意識でコントロールできない・・つまり自立して動いてしまっている」という事実が大きくて、これらの症状を自分で何とかしようとしても、どうしようもないのですよね。悲しいかな気持ちでは治せないのです。

 

さて、更年期障害といいましたが、更年期障害は女性ホルモンがなくなってくるから起きる現象と考えられていますが、女性ホルモン(ほかのホルモンもですが)の中枢は脳の視床下部というところにあって、その同じ場所のお隣に自律神経の中枢があり、お互いに密接に関係しているのです。ある意味では「更年期障害は自律神経障害だ」と脳の解剖からも言えるのですよね。

 

2.4 自律神経と背骨の関係

 

脳の深いところにある視床下部と言う自律神経の中枢と背骨がどうして関係があるのでしょうか。自律神経は体全体をコントロールするから、その命令を託されたケーブルつまり神経は脳からすべて出ているのかと言うとそうではないのです。ここに自律神経と背骨の関係があるのです。

 

背骨は体の骨格の中心でどんなスポーツや健康談義などで体の芯として必ず「重要なものである・」と出てくるものです。背骨は確かに体の「芯」でありますが、もうひとつ重要な背骨の役割は「脊髄」と言って脳の続きの重要な脳の出店を入れることなのです。脊髄も脳と同じくらい重要なものだから、脳が頭蓋骨でガードされているのと同じように、脊髄も背骨でガードされているのです。

 

背骨とか脊髄についてはまたあとで詳しく述べますが、ここでは体全体の自律神経というネットワークの仕組みをご理解していただければと思います。つまり、自律神経は体全体に張り巡らされているのですが、冒頭で述べたように、その中枢である脳から発せられる自律神経は交感神経、副交感神経と二つの回路のうちの副交感神経だけで、しかも顔とか上半身までにしか張っていないのです。では副交感神経の体の残りはどうなっているのかと言うと、脳からの命令が行っていない下半身は背骨でいうと腰の辺りにある脊髄からでた副交感神経が張り巡らされています。一方交感神経はというと、首から腰の上のほうまでの背骨に入っている脊髄から体全体に張り巡らされています。

 

この背骨から発せられる自律神経とくに交感神経は背骨の前に中継基地を持っており、それが上下につながっているのです。これが具体的な自律神経と背骨の関係になるわけです。

そして、この自律神経は背骨の中の脊髄を通して脳の自律神経中枢と密接な関係をもっているわけです。ですから、なにか背骨でトラブルがあると、直接背骨の前の交感神経に影響したり、脊髄を介して脳の自律神経中枢に影響を及ぼすことになります。つまり、タイトルで述べた「不眠は背骨に原因がある」ということは、背骨は密に自律神経に関係し、それが脳へ及べば睡眠のリズムのジェネレーターである自律神経中枢に影響を及ぼすわけです。

 

3.1 体を温めると眠りやすい?

 

背骨の見地からお話したとおり、体の芯である背骨も筋肉もリラックスしていたほうがいいわけです。筋肉が緊張した交感神経優位な状態は避けたいわけですね。どう考えても冷え切ったキンキンの状態では誰も寝られませんよね。だから、体を温める、つまりお風呂に入ると言うのはよりよい睡眠のためには理にかなったことなのです。

 

僕は温泉のいろいろな病気への効用ってあまり信じていないのですが、暖まるという物理的なことに関しては、信用しております。あまり暖かすぎないお風呂は、血管を広げて血行を促進し、筋肉をリラックスさせてくれます。そして、時間をかけてゆっくり入り(最低でも20分くらい)、リラックスすれば、頭の中の自律神経の中枢も交感神経から副交感神経にスイッチします。そして、お風呂から出てリラックスして一息つくと交感神経がさらに沈静化されて脈拍も下がり(お風呂の中では交感神経も結構働くのです)、副交感神経の心地よい支配となり、これで入眠しやすい状態となるわけです。

 

ただ、ご注意いただきたいのは、あまりに熱いお風呂はよくないのは当然として(歯を食いしばるような熱いお風呂を我慢することは交感神経優位になりますからね)、そこそこの熱さのお風呂に長く入ると、心臓に負担がかかります。体の血管が広がり血液をたくさん送らなくてはならないので、ポンプの仕事をしている心臓に負担がかかると言うことです。ですから、温度的には39-40度くらいがよいと言われています。

 

お風呂に入ると眠気が覚めるのかと思っている方も多いかと思いますが、暖めて、筋肉も心もリラックスすることが大切なんですね。

 

3.2 寝るときの姿勢

 

寝るときの姿勢なんて決まっていないのですが、どうしても、布団に入ってなかなか眠れないと、色々布団の中で動き回っちゃいますよね。ちょっと首を曲げてみたり、仰向けになったりうつ伏せになったりと、いろんなことを試す方も多いんじゃないかと思います。

 

「必ず眠りに入れる姿勢」なんてないですが、お母さんのおなかの中にいたときの格好と言うのは、ひとつのヒントかもしれません。おなかの中で、すやすや寝て、豆粒みたいな大きさから育ってきたわけですから。どんな格好かと言うと、図にあるとおりなんですが、「く」の字になっているのです。割と多くの方がすすめるのは、その「く」の字になって、そして、何かを抱いて寝る・・抱き枕!!作戦が良いかもしれません。甘えん坊の赤ちゃんに戻るのが一番でしょうか。

ただ、実際には、あまりの「く」の字は腰には良くないでしょうから、その曲げる程度は人それぞれでいいですよね。

 

 

これがおなかの中にいるときの赤ちゃんの格好なのです。これもひとつのヒントになるかもしれませんね。

 

3.3 ベッド・布団はどうしたら良いの?

 

なんたって、自分の一生のうちの三分の一から四分の一を過ごすところがベッドや布団の上ですからね、これってものすごく重要ですし、投資の価値はありますよね。寝具メーカーさんは、当然ながら、いろいろな観点からどんどんよいものを開発してくれています。しかし、投資するといっても限界はありますから、ご自分なりに、やはり寝具と背骨の関係を知っておいたほうがいいですね。

 

よく、やわらかいベッドに仰向けに寝ると、「お尻が沈む」、「背中が伸びない」「腰椎の前弯が強くなる!それが椎間板に良くない」、「背中と敷布団の接触面が押されられすぎて、毛細血管が圧迫されてよくない」などと言われています。

背骨の病気の専門家の僕なりに寝ながら考えてみたことをお話します。腰椎には背骨の仕組みのところでお話した「前弯」というのがついていますが、よく言われているように前弯が強くなったとしても、実は椎間板には負担はかかりません。むしろ腰椎の後ろの部分の椎間関節というところにストレスが加わることが考えられます。この関節からくる腰痛なども起きることは十分に考えられます。「お尻が沈む」というのは事実ですよね。これは、先ほどの逆で、腰としては丸くかがむ感じ、つまり腰椎が後弯する形となり、それこそ椎間板に圧力がかかります。まあ寝ている間の圧力は普通の椎間板にとっては大丈夫なものであるはずなのです。では、寝ているときの後弯がなぜいけないかと言うと、後弯すると腰椎の後ろの部分の筋肉が伸ばされることで筋肉痛が起きるからです。これは先に述べた筋肉の悪循環が起きちゃうわけですよね。いい事はないのはここまで読んでくださった方はお分かりですよね。

さて、「圧迫で毛細血管が圧迫されるからよくない!」と言うのは、沈むからおきるとも言われていますが、本当にそうでしょうか?ケース・バイ・ケースですが、むしろベッドが硬いときにおきやすいと思います。これは「床ずれ」といわれるものと同じで、お尻の骨の部分は誰でもクッションが少なく血管が少ないので、すぐ赤くなりますし、圧迫によって痛みの原因となるのです。

 

ですから、やわらかすぎるのはもちろん腰椎などの本来のカーブが取れませんし、硬すぎてもさすがに背中や腰が痛くなるでしょうし、さらに床ずれも起きてしまう。また、やわらかいベッドでは横への寝返りすら大変です。寝返りは何回も寝ている間にほぼ無意識でするものですから、やりやすくないとね。

つまり、結論から言うと、二本足歩行をする人間にとって、自然についた頚椎、胸椎、腰椎のカーブが大きく損なわれないほどほどの硬さのものがよいということです。あとの微妙な硬い柔らかいというのは、個人的志向でいいと思います。「あ・・この硬さが一番だ」と思いながらベッドに入ることが「副交感神経優位」にしてくれますからね。

 

掛け布団はどうでしょうか?

羊毛や羽毛などの天然素材は軽くて放湿性がよいことなどから高級ですよね。重いと体に負担をかけるから軽いほうがとも言われたりしています。でも、僕は、重さが心臓や血圧などに影響があると言われていますが、そこまで切迫された方が多いとは思えず、病院でも患者さんは掛け布団をかけるわけですよね。ですから、掛け布団の重さの医学的な影響は疑問です。ちなみに、僕はある程度重さがある「あ・・布団をかぶっていて安心だな・」という感覚がある掛け布団が好きです。僕にとって、抱き枕と同じ原理かもしれません。そう思うと副交感神経が働いてくれて安眠できるのですね。でも、あとは、どこかへはねてしまっていて、夜中はお役ごめん・ということは多々あります。まあ、寝られるだけいいですよね。

 

3.4 枕の形・材質はいかに?

 

昔のお殿様が使っていたような枕は一般には良くなくて、首の後ろの筋肉が突っ張って肩こり、首痛をおこすと言われています。一方、ドーナッツ型の枕では仰向けに寝ているときに、首は後ろへ曲がる(首の骨が前にアーチを作る)から、本来の頚椎の前弯が出来るので、首の後ろの筋肉がリラックスすると言われています。また、横を向いたことを考えたほどよい高さ(肩幅の1/3くらい・)が必要ですよね。ですから、安眠枕としてはドーナッツのような形のものが多少の違いはあるもののよく提案されていると思います。

このように枕に関してはいろいろな形そして材質が言われているわけですが、僕は個人的には、そのときそのときで自分が必要とする枕の形は違うと思うのです。殿様枕もある首が病んでいる人には必要なのです。頸椎椎間板ヘルニアの方には、首を後ろのそらす(前弯を強くする)のは、神経痛を起こす原因になるのです。ですから、僕は、ある程度形を変えられて、そして、それほど大きなボリュームでない枕を二つ組み合わせては?とお勧めしています。あるときは二つを組み合わせて頭の高さを高くしたり、あるときはひとつを首の下に入れて頭を後ろへの曲げるカーブを作ったり、横を向いたときに重ねて高さを作ったりなどは良いのではと思うのですが。なんたって、同じ姿勢でいることが辛いのですから、何回もいろいろな姿勢になったほうがいいのでね。

 

 

また、枕の中身の材料はいろいろなものがあります。そば殻、お茶の実、竹炭、桧チップ、ビーズ、パイプ、低反発ウレタン、などですが、さらにトルマリン、マイナスイオンを出すものとか、いろいろな?効用を謳っている物もありますよね。僕は温泉ではありませんが、あまり効用は信じておりません。でも、寝返りを打ったときなどに、程よく枕の形も変わってくれて、頭と首を気持ちよくサポートしてくれると良いですね。基本的なことでしょうが、通気性が良く、清潔感を保ちやすいものであることも重要ですよね。

 

4.1 入眠薬、安定剤は?

 

不眠でお悩みのかたがたに僕たち医者が出来ることは、入眠薬や安定剤というカテゴリーのお薬を処方することです。

入眠薬とは睡眠導入剤とも言われ、眠りに入れてくれるお薬です。もうひとつのお薬としては精神安定剤になります。これは、神経の興奮つまり交感神経の興奮などを抑えてリラックスさせてくれるお薬です。そして、この薬の副産物みたいなものですが、体の筋肉を和らげる作用(筋弛緩作用といいます)がありますので、体もリラックスするわけです。

簡単に言うと、入眠剤は眠りに入れてくれるお薬で、安定剤は眠りの深さを深くしてくれる(ノンレム睡眠をながくしてくれる)お薬と思えばいいのではと思います。

 

これらのお薬は「ベンゾジアゼピン系」と呼ばれており、麻薬のように「なくてはいられなくなるような作用(禁断症状)」も少なく、安心して使えるものなのです。そして、変な目的でガバーっと飲んでしまっても、呼吸が出来なくなるようなことはなく安全なお薬です。だから、医者のほうも、今はまとめて患者さんにお渡ししても安全なので、30日分くらい処方できるようになったのです。

 

入眠剤は効果が続く時間から、とても短い作用時間、短い作用時間、中間くらい、長い作用時間、などに分類されています。

ですから、眠りにつきにくいタイプの不眠症のかたは、短時間型の入眠剤だけ飲めばいいでしょう。いったん眠りにつけばあとはどっぷり寝られるわけですから。そして、眠りにはつくけど途中で起きちゃう不眠症の方(多いですが)入眠剤を使うならやや長めに効いてくれるものがいいでしょうね。あるいは、安定剤みたいなものも一緒にもらって、眠りを深くしてもらうのもよいのではと思います。また、朝早く起きてしまった場合、まだ自分がおきなくてはいけない時間までに3時間くらいあるなら、超短時間型の入眠剤を飲むのがよいようです。3時間後に薬が効いて起きれない・」と言うことはないからです。

 

ともかく、睡眠のトラブルのパターンは人それぞれですし、同じ人でも変わることが多いですから、医者と相談して薬を調節してもらうことも重要ですが、薬の種類や性質をご自身で知って、うまく使いこなすことも大切と思います。

 

最近は、ベンゾジアゼピン系ではないお薬も何種類か使えるようになりました。マイルドですが、これらで不眠が改善されればそれに越したことはないので、医師とよく相談して試されてはと思います。

 

一般の薬局などでは、漢方薬なども販売されているようですが、僕はあまり使ったことがなくて、どの程度効果があるのかはわかりません。

 

4.2 アルコールは

 

アルコールは?一見、お酒を飲むと眠りが深くなりそうですよね。僕もお酒を飲むのでいろいろ体験しています。しかし、酔っ払った勢いでそのままドガーンと長い間寝ることもありましたが、どうも最近はそんなことはないなア、かえって夜中にトイレなどに起きてしまうことが多いな・と思っておりました。

最近の医学的な報告では、アルコールを飲んだ後の眠りの質は決してよいものではないと言われています。脳を休めるのに必要なノンレム睡眠の時間が少ないのではと言われています。

 

寝酒つまりナイトキャップは、アルコールとしての催眠効果はあるということで取り入れている方も多いかと思います。実際はアルコールの効用はちょっと難しいところがあり、飲む量が問題となるわけですね。就寝の30分〜1時間前までに、ゆったりとした気分でほろ酔い程度まで飲むのがよいのかもしれません。

 

4.3        食べ物、アロマは

 

まずは安眠のためには、胃腸に負担をかけない夕食の摂り方もとても重要です。寝る直前に食べると、睡眠中も胃腸は消化活動にあたらなければならないため、安眠できませんから、夕食は寝床に入る3時間前までに終えるように。消化に時間がかかる脂っぽい料理をたくさん食べると、胃がもたれるので注意したほうがよいでしょう。また、夜、遅くまで起きていて、どうしてもおなかがすいたときは、消化がよくてカロリーの低い夜食を、就寝2時間前までに摂るようにしておきます。また、内容としてはバランスのとれた食生活が基本で、良質のタンパク質を中心に、植物性脂肪と糖類を適度に摂り、ビタミン類とカルシウムなどのミネラルもよいとされています。

睡眠に関係があるホルモンのメラトニンを刺激するためのセロトニンという物質をつくるためのトリプトファンというものがあります。これは体の中で作られないので、食べ物として補給するべきと考えられています。だから、このトリプトファンをとりましょう・・ということで、バナナや牛乳なども勧められています。

 

このように書きましたが、実は僕は個人的には食事の内容はその晩の睡眠には直接関係がないと思っています。そもそも、それらを食べても吸収には時間がかかりますし、それらは自律神経を含めた脳の機能に直接的に働きかけるとは思えないからです。基本的には脳は酸素と糖分だけで動いている珍しい臓器ですからね。あまりにも食事内容などに神経質になることが交感神経の緊張を高め、ひいて寝られなくなってしまうのではと危惧します。

 

でも、話を戻してしまいますが、別に「よいと言われている食べ物をとるな」と言っているわけではありません。寒い冬に暖かい牛乳を飲むとリラックスするでしょうし、トリプトファンの補給と体温の上昇をかねていいかもしれませんね。

 

アロマなどの効果も言われています。これは、やはり自律神経のバランスを整えてくれるのでしょうね。やはり、よい匂いをかいでリラックスするのはいいことですね。ちなみに、匂いを感じる脳の中枢はとても人間の原始的機能を司る部位にあたるのですが、その場所は視床下部という自律神経の中枢に近くて、実際に神経の密接な連絡があるのです、本当に。つまり、このような動物としての原始的なインプットによる自律神経の調節は理にかなっているように思います

 

4.4 気持ちの開き直り

 

 「今夜も眠れないかもしれない」という不安を抱いている人は、不安が不安を呼んでますます寝られなくなるのでは?不安があると言うことは、どきどきするわけで、交感神経が高ぶっているわけですよね。

基本的なことかもしれませんが、通常、人間が眠らないでいられる時間は、せいぜい4〜5日、不眠不休で働けるのは2日どまりと言われており、しかも不眠で死亡した人はまだいないと言われています。

このような事実を鑑みてください。そして、気持ちの上で開き直りましょう。「寝られなくて死ぬわけではないから・・」とか「まあ、横になって体だけでも休めていればいいや」とか。もしかするとそういう気持ちが高ぶった交感神経を鎮めてくれるかもしれません。

 

もっと短絡的には、逆に「今夜は眠らないぞ!」と腹を決めてしまえと!という方もいます。徹夜を覚悟で好きな本などを存分に読んでしまう。そして、翌日の仕事にはちょっぴり響くかもしれませんが、次の夜はぐっすり眠れるはずです。あるいは、翌日に15分昼寝できれば大丈夫ですよ。それで良いではないですか!

 

5.1 睡眠はなぜ必要なの?

 

脳って重さはたった1.5kgくらいしかないのに、ひっきりなしに活動していて、そして、大飯ぐらいなのです。脳が使うエネルギー(酸素とブドウ糖しか使えないのですが)は身体全体の使うエネルギーの20%くらいにもなるんです。

だから、しっかり休ませてあげないと、働きが鈍くなっちゃうわけで、その休憩のために睡眠が必要な訳です。ただ、不思議なのですが、脳の内側のほうにある記憶をつかさどる部分では、寝ている間に起きている間の経験や情報などを整理しているようです。だから、悲しいことや辛いことって、脳が整理するものだから、一晩寝るとその感情が和らいだりするわけで、ストレスなども発散していると考えられています。

 

このようにこの内側の脳みそは活動しているわけですが、さらに脳の中央部分にある視床下部のホルモンの中枢からは成長ホルモンというホルモンを出すんです。特に寝て間もないころに大量に出るのです。このホルモンは呼んで字のごとくですが、体の組織の新陳代謝をしてくれるわけです。「寝る子は育つ」というのはことわざどおりで本当なわけですね。寝不足だと新陳代謝が悪くなるわけです。皮膚の新陳代謝(つまり細胞の入れ替わり)も睡眠時間で行うので、美容上も良くないわけですよね。そのほかに何種類かのホルモンも睡眠中に出るのです。

 

つまり、睡眠って心と体の休憩時間であるのですが、ホルモンなど体の調整にかかわる重要な作業をしている時間でもあるわけです。その作業のため、脳の活動に消費されるブドウ糖の量は、起きているときとほぼ変わらないのです。脳は働き者ですね。

 

5.2 睡眠の仕組み

 

第1章で述べたように、睡眠には二種類あるんです。それぞれレム睡眠とノンレム睡眠と呼びます。不思議ですが、この二つが組み合わさってワンセットとなって、それが睡眠中に繰り返されるのです。ワンセット90分くらいのようですから、一晩に4回くらい繰り返すと言うことですね。ワンセットのなかの割合からすると、レム睡眠が最初は少ないですが、徐々に割合を増すと言われています。

 

人間は浅い眠りであるレム睡眠と、深い眠りであるノンレム睡眠の2種類繰り返す中で、1日の疲れを取っています。具体的にはレム睡眠とは「身体を休める眠り」です。レム(REM)とは閉じたまぶたの奥にある目玉がすばやく動いていることを意味しています(rapid eye movementの略です)。この間の脳は活発に活動していることが判っています。ですから眠りが必要な理由でお話した記憶の整理や固定という重要な作業をしているのです。夢を見るのもレム睡眠中の出来事で、夢の映像を目で追っているから目が動くのだと言われています。ただ、ほかの体の筋肉はリラックしているんです。つまり、体を休めているわけです。一方、ノンレム睡眠はレム睡眠の逆で、「脳を休める眠り」です。夢を見ずにぐっすりと眠っている深い眠りの状態なわけです。むしろ、この間は体の筋肉は少し緊張しているようです。

 

レム睡眠とノンレム睡眠が繰り返される理由は、ちょっと複雑です。一晩中深い眠りのままのほうが熟睡できるようにも思えます。でも、最初から最後までノンレム睡眠だけだと、一晩中脳が休息状態となって、起きたときに正常な活動レベルまで戻すのが難しくなってしまうのです。脳の温度も下がるとも言われています。ですから、適度にレム睡眠をはさむことにより脳の温度が下がりすぎを防ぎ、朝起きたとき、大脳がスムーズに活動を再開し一日を始めることができるのです。具体的にも、当初はレム睡眠の割合は少なくて、明け方から割合が増えてくるようになっています。

 

睡眠時間については、第1章で述べたとおりですが、6時間以下の人をショートスリーパー、9時間以上の人をロングスリーパーとして分けています。大部分の人はその間に入りますが、睡眠時間の長短と睡眠の質とは直接関係はないと考えられています。長く眠るから良い睡眠、短時間の眠りだから悪い睡眠とはいえません。目覚め感の良い睡眠とは、ノンレム睡眠で十分に大脳の疲れをとり、レム睡眠で肉体の疲労をとることによって得られます。脳を休めるノンレム睡眠の時間は睡眠時間が長くても短くても全体の中ではあまり変わらないと言われています。つまりショートスリーパーではレム睡眠が少ないと言われていますから、脳の休息に関しては大丈夫なんでしょうね。

 

 年齢によっても睡眠時間は変化します。赤ちゃんのときは16時間程度ですが、成長するにつれて、どんどん短くなります。成人で7-8時間、70歳以上の高齢者では6時間といわれています。このように睡眠時間が短くなる理由は、は後でお話しする体の中の睡眠を司る物質であるメラトニンが減ってしまうからと言われています。

 

5.3 眠りのリズム

 

人間は生まれたときから自然にリズムを刻む「体内時計」が備わっているといわれます。考えてみれば、古来から人類は時計がなくても、朝太陽が昇るとともに目覚め、太陽が沈むと寝る生活をしてきたわけですしね。

この体内時計は脳のどこにあるのかと言いますと、先ほど言ったホルモンの中枢に関係した視交叉上核とさらに松果体というところにあります。光を見ることで、この部分が刺激を受けるのです。この部分は自律神経という人間の体の調整を知らないうちにしてくれるとても重要な機能を持つシステムの中枢なんです。

もう少し詳しくお話しすると、目が感じた光の刺激の程度によって、松果体はメラトニンの放出する量を決めるようです。しかもその分泌はその15時間後らしいのです。従って、昼間にはほとんど分泌されず、夕方以降分泌量が増えはじめ、午前2時頃に分泌量がピークに達します。また、目に入る光の量が減ると、松果体がメラトニンを分泌し始めるようです。朝になると、メラトニンだんだん減るので、お休み時間が終わるわけですね。

 

つまり、光と言う刺激などを受けながら、松果体というセンターが睡眠のリズムの起動をしていているわけです。そこから自律神経というコントロールセンターへ命令を送り、そこから、ホルモンを分泌したり、周囲の脳の調整、ひいては体の調整をしているんですね。

 

ただ、本来持っている人間の体内時計は25時間周期と言われています。地球の自転周期に合わせた社会生活のリズムは24時間、そのため約1時間のずれを生活のなかで自然に修正しているわけです。人間に時計を持たせないで、窓のない建物のなかで生活させると、通常1時間ずつ後ろにずれる、つまり入眠時間が遅くなり、朝起きる時間も遅くなるという実験結果が出ています。太陽の上り下りと言う刺激があるからこそ、睡眠のリズムがあり、24時間周期で生活できるのですね。その意味でも「今はもう朝なんだよ!」と言う感じの光の刺激がおきるためにも寝るためにも必要になるわけで、この光の刺激の原理が、時差ぼけ対策に応用されたりしています。

 

5.4 ほかの動物も同じように寝るの?

 

脳を休めるノンレム睡眠は、大脳が発達した哺乳類や鳥類にしか見られません。ですから、 「進化した眠り」と言われることがあります。それに対し、大脳新皮質が未発達な生き物にも見られる睡眠はレム睡眠であり、エネルギーを温存してし、体の疲労を回復することを主な目的にしているため、「原始的な眠り」とも言われています。人間の複雑なレム・ノンレムの睡眠システムが出来上がるには、ヒトとしての脳の発達と生物の進化の過程が大きくかかっているのですね。