頭痛

僕、頭痛の治療を専門に行っているクリニックで長年お手伝いさせていただき、頭痛の患者さんをたくさん診させていただいている経験があります。ですので、割と他の頭痛の専門医と同じように頭痛に関しては理解して対応しているつもりです。

 

頭が痛いことは、他の体の部位が痛いとかよりも心配される方が多いですよね。その理由は、ま、頭の中に脳があるので、「脳のなかに何か病気があるのでは」ということが、余計に心配だからですよね。やはり、心臓と脳の病気は命に直結するので心配になりますよね。あと、頭痛って外から見えないので、周りの人に理解してもらえない辛さもあります。

 

実は、頭痛のうち脳の病気で痛みが出るのは1%くらいしかないのです。脳の病気というのは、たとえば、脳出血とか脳腫瘍などですね。でも、実際の頭痛のうち99%は脳の外側=頭の骨の外のトラブルが原因なんです。

 

 

 

骨の外側って、左の図のようになっているんです。

茶色は頭蓋骨の周りに張っている薄い筋肉です。これは頭全体を覆っているんです。その上にある黄色ものが神経です。そして、赤色が動脈、青色が静脈です。

 

頭痛はほとんどは、頭蓋骨の周りにあるこの3つの構造物のうちのどれかが原因で起きているのです。

それぞれについて説明をしますね。

1.      筋肉

筋肉が緊張してくるから肩こりのように痛みが出ますから、緊張型頭痛といいます。

想像するとわかると思いますが、コリみたいですから、「凝る」「重い」「押されるようだ」「輪っかをはめらているようだ」などと表現する方が多いです。きつい帽子をかぶっているようでもあるから、被帽感とも呼びます。

朝から起きるより、なんとなく昼から夕方にかけて起きる方が多いです。

治療ですが、まずは専門医にしっかりと診てもらって、頭の中に何も異常はないことを確認することが一番だと思います。この「安心感」が一番良いお薬になるかと思います。「なんだ、心配することはないじゃない」と思えばね。

それでも辛いようでしたら、ま、少しでも楽になるような対応をしましょう。

医者は薬を出しますね。これは一般的な痛み止めが多いのですが、ある種の軽い安定剤を服用すると、筋肉の緊張が取れる(肩の荷が降りる)ことが多いです。

あとは、首の周りや肩・肩甲骨周りのストレッチをすると軽くなると思います。もちろん、筋肉をリラックスしてもらうために、マッサージなどに行かれることもいいかと思います。ま、そこにお金と時間を使うだけのご利益があればと言うことですね。

 

2.      神経

頭の皮膚の下の神経から痛みで神経痛と呼ばれます。

場所としては、頭の横や後ろ頭の左右どちらかが多くて、突然、ビリビリする、電気が走ると感じる方が多いと思います。多くの方は、ずっと続くのではなくて、発作的に起きるようです。

原因はわからないことが多いのですが、「神経が風邪をひいたの同じ」と思った方がいいです(ウイルスでしょうか)。

治療としては、体全体にウイルスが入ってしまっているようならそれなりの検査などが必要ですが、そうでない場合=頭痛だけの場合は、鎮痛剤を使います。ただ、突然起きるシャープな痛みが多いので、なかなかゼロにすることはできないと思います。ただ、風邪と同じなので、時間が解決してくれることが多いです。

ウイルスが神経についちゃうので有名なのが、「帯状疱疹 ヘルペス」です。小さいときにかかった水疱瘡と同じウイルスが体の中に潜んだままなのですが、そのウイルスがこちらの体調のタイミングを見て、体のどこかの神経に炎症を起こすことがあります。これは、頭の前の部分や後の部分(体のどこででもですが)に神経痛を起こします。帯状疱疹はただのウイルスではなくて、神経痛を起こした後1日2日するとその部分の赤み、水泡が出来てきます。

帯状疱疹も自然に治っていくので、他の神経痛と同じなのですが、ただひどい場合には後遺症として慢性的な神経痛を起こしちゃう可能性があります。ですので、痛くなったら専門医を早めに受診して、すぐに抗ウイルス薬を服用したりすることで、被害(後遺症)を最小限度に留めるようにします。

後遺症として痛みが残った場合には、特殊な痛み止め(神経障害性疼痛に対する薬物)などをお出ししますので、ご安心ください。

なお、頭の前頭部に帯状疱疹ができた場合、特に三叉神経痛という状態になります。この場合には、目の表面も侵されてしまうことが多いので、眼科での目のチェックも必要です。

 

3.      血管(動脈)

頭の皮膚の下の動脈が原因で起きる頭痛で、血管性頭痛と言われす。

動脈ですから拍動するので、「ズキンズキン」「ガンガン」と表現する方が多いです。場所としては、頭のどちらか半分が多く、横から目の奥や後頭部が多いです。ですので、半分だから「片頭痛」とも呼ばれています。

朝から起きること多いですが、夕方からの方もいらっしゃいます。

原因はほぼ確定したのですが、どうも、脳の血管の太さをコントロールがうまくいかなくなってしまうと血管が広がって痛くなるようです。この太さをコントロールしているのが自律神経です。体温や脈拍やお腹の動きなど、意識的に動くわけではない需要な神経が自律神経ですが、脳では三叉神経がその仕事をしています。この自律神経のアンバランスが血管性頭痛の犯人です。つまり、片頭痛持ちの人は自律神経失調症なんですね。

 

ですから、片頭痛で一番典型的なのが・・・若い女の子が生理が始まる頃くらいの年齢で頭痛を経験します。その前兆として、目がチカチカする「閃輝暗点」を起こし、その30分後くらいに頭痛が始まり、普通の痛み止めはあまり効果がなく、ただ寝ているだけでしか対応できない。そして、ひどいと吐き気をひどくもよおし、吐いてしまうことも多いです。ひと山超えても、後頭部とかに重い感じの緊張型頭痛が続くことになります。

こんなようなのが典型的な片頭痛のエピソードですが、男性にもおきますし、女性でも違う年代でも起きます。また、生理が終わった後でも起きる方もいます。つまり、自律神経のセッティングが変わると起きちゃうわけですね。

寝ているしかないので、サボっているのではと思われたり、吐きそう・・と訴えてもお腹が悪いわけではないので「詐病」と思われることがあり、患者さんはかわいそうです。この吐き気は実はお腹の中の自律神経失調による症状なんですね。

自律神経の源は脳の中にあるので「脳内過敏」という考え方もあります。

 

対応ですが、典型的な頭痛持ちの類になるわけですが、一度は頭の中をMRIなどで調べた方がいいですね。変な脳の奇形があったりしてはと心配でしょうし。

そして、あとは、お薬による治療です。

緊張型の頭痛には通常の鎮痛剤や安定剤が効果がありますが、本番の血管性頭痛はこれらでは対応しきれないことが多いです、もちろん、市販薬でも。医師しか処方できない薬ですが、特効薬として、トリプタン製剤というものがあり、これを頭痛が起き始めたら、すぐに服用することをお勧めします。これでハッピーになる方が6、70%くらいですが、不満足な方には、予防薬を1日2、3回服用してもらうことで、頭痛発作の頻度とか程度が軽くなりますので、トリプタン製剤を服用しながらなんとかなります。トリプタン製剤までは普通の医者も処方することもありますが、やはり、他の鎮痛薬も含めて、専門医に相談するのが良いと思います(鎮痛薬は使わないほうがいいのです、使いすぎると薬物乱用性頭痛と言って、どうにもこうにも治りにくい頭痛を持ってしまうことがあるからです)。

先ほどの、「吐き気」も同じで対応(予防薬など)で良いと思います、もちろん、ある種の吐き気止めも効果が期待できますが。吐き気も含めて「脳内過敏」の症状はお辛いでしょうが、諦めないでご相談くださいませ。

 

片頭痛は、上記のとおりいくつかの予防薬で多くの方は発作の回数が減りますが、それでも日常生活に支障がある方もいらっしゃいます。そのような方を対象に、CGRPという注射をすることで発作回数を減らすことが出来ます。一回打つことで効果は1ヶ月あまりあると言われています。ただ、特殊なお薬であるため、非常に高価です(3割負担の方で1万円少々かかります)。これは考え方にもよりますが、毎月打つとして、「毎日三百円使うけど頭痛がひどくなく学校や仕事に行ける」ならハッピーとも言えます。