頭の怪我

頭を打った時の注意事項

 

頭をぶつけるとやはり心配ですよね。何が心配って、やはり頭の中に出血しちゃったりということでしょうか。それだけでなくて、頭の皮膚からも出血が多いですよね。

まず、出血ですが、落ち着いて、ゆっくりと軽く圧迫をしてください。汚いところでの怪我の場合は、水道水でいいので、よく洗い流しちゃいましょう。その後に、圧迫しましょう。5分くらい圧迫していると自然に止まることがほとんどです。傷が大きいようなら、また、大きくて髪の毛があとで生えてきそうもなくてご心配なら、後日でもいいので脳神経外科 を受診されてくださいね。

 

あと、やはり本当に怖いのは頭の中の出血ですよね。

外来でみなさまにお渡している、資料を以下に掲示しますので、参考になればと思います。

 

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頭をぶつけた後は、何かとご心配かと思います。

一番心配なことは、頭の中(頭蓋骨と脳の間)に出血して、脳を圧迫して、脳への障害や最悪の場合、命に関わることです。

 

ぶつけたあとは、このようなことが起き得るのは24時間以内(子供の場合48時間以内)ですので、この間は以下のことに注意してください。

 

1.      帰宅後の注意

(ア)無理は避けますが、通常通り生活してください。

 

2.      次のような症状が現れたら、脳神経外科が待機しているような大きな病院を受診してください。頭の中に出血している可能性が否定できないためです。

(ア)頭痛がだんだん強くなる

(イ)嘔吐する

(ウ)けいれん(ひきつけ)

(エ)手足に力が入らない

(オ)意識がぼんやりする

 

3.      小児特有の注意点

(ア)微熱などが出ることはありますので、あまり神経質にならないでください。

(イ)小児は頭をぶつけただけで嘔吐をすることがありますので、その後、機嫌や顔色が問題ないようなら、様子を観察してください。

 

4.      高齢者特有の注意点

(ア)外傷後1−3ヶ月後に頭の中に血が溜まってくることがあります(慢性硬膜下血腫)。この場合、頭重感や頭痛、手足に力が入らない、急に物忘れが多くなる(認知機能の低下)などが現れます。このような症状が現れたら、脳神経外科を受診してください。

 

これらの注意事項は、日本脳神経外傷学会の指針によるものです。

 

谷眼科(脳神経外科) 谷 諭

(東京慈恵会医科大学 脳神経外科)

(日本脳神経外科外傷学会 監事、日本脳神経外科学会 評議員)

脳振盪の話

 

ボクサーがパンチを打たれ、リング状に倒れたり、フラフラしたりするのが脳振盪ですよね。脳振盪は頭を揺すられたことで、脳がねじれちゃうことで起きる症状なんです。

これにより、意識を失ったり、「いったい自分は何をしているの?」「ここはどこ?」的なボケをかましてしまうこともあります、そして、フラフラ酔っ払いのようにもなりますし、このような状況を脳振盪と呼んでいます。でも、この人たちはその後も、ボーッとしたり(霧の中にいる)、頭が重い、痛い、寝られない、などを症状を引きずることがあり、これも脳振盪の症状と考えられています。

脳振盪は、その後元気になれば問題がないじゃないか・・という古典的な考えから、パンチドランカーと呼ばれるような脳振盪の繰り返しでおばかさんになってしまうことが注目されました。

僕は、プロボクシングのリングサイドドクターを1991年から30年あまり行ってきたのですが、この脳振盪は由々しき問題があることから、研究なども行ってきました。そんな折に、さっkーでヘッディングすると馬鹿になるのでは?という話が1990年代後半から持ち上がりまして、その頃、サッカー協会でのお仕事もさせていただき、今に至っています。

 

お話ししたいことはたくさんあるのですが、脳振盪を起こしたらどうしたらいいかなどは、サッカー協会のHPに僕が記述しておりますので、参考にしてください。

また、以下には、サッカー選手向けの脳振盪の簡単な解説を書いたものを再掲いたします。

すこしでも、お役に立てばと思います。

 

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サッカーでの脳振盪の復習

JFA医学委員

谷 諭

 

脳振盪は頭を打たなくても起きる

頭がひどく揺すられると、中に入っている脳みそが歪んでしまいます(豆腐をケースごと揺すれば、豆腐は壊れる)。脳みそが歪むと脳の中に沢山ある神経のケーブルが伸ばされるので、脳の機能が侵されてしまい、脳の停電を起こしてしまう事を脳振盪と呼んでいます。

ですから、必ずしも頭をぶつけなくても、激しくボディチェックを受けたりした際に頭が揺すられることだけで脳振盪は起きる事があります。

 

サッカーではどんな時に起きるの?

脳振盪が起きているかは分からないことが多いので正確な頻度は分からないのですが、トップレベルでは100試合に2回くらいは起きているようです。もちろん試合だけでなく、練習でも度々起きているようです。

どんなプレーで多いかも正確にはわかりませんが、ゴール近傍の空中戦などでの衝突からグランドに落下したり、肘などが当たることなど「不意打ち」で起きることが多いようです。さらにはヘッディングで起きることは知られていますが、雨などで重量が増えたボールは頭へのショックは大きいでしょうが、そうでないようであれば、起きにくくなっているのかと思います。

また不思議なのですが、一回脳振盪を起こすと、次は割と軽い衝撃でも起こしてしまうと言われています。

 

脳振盪は意識を失うだけではない

ピッチの上で脳振盪と分かるのはなかなか少ないです。打った直後に意識を失うというような典型的な脳振盪なら誰でも分かりますが、打った後のプレーの記憶が後で残っていないと言うような記憶障害(健忘)、さらにはフラフラ(酔っ払いのような足どり)も脳振盪として分かりやすいかもしれません。しかし、実はぶつけた後に、何となく頭が重いとか、めまい、霧の中にいるような感じを持つ方がいますし、さらには、なんか眠りにくいなどの不眠症を起こすことがあり、これも脳振盪の症状と考えられています。

 

脳振盪からの回復は?

頭を打った後、すぐにケロッとする事も多いかと思います。しかし、先に述べたように、後から睡眠がおかしくなったり、頭痛、頭重感などが継続する事があり、このような症状が軽くなるのに5から10日くらい要することもあります。多くの人はこの期間内によくなるでしょう。ただ、繰り返していると、原因は分からないのですが、この回復期間が伸びると言われています。

 

脳振盪は繰り返しが問題だ

脳振盪は戻るので普通はひどく心配することはありません。しかし、昔にパンチドランカーと言われたボクシング選手の引退後の認知症や精神障害などが脳振盪の繰り返しにより起きたという事実が問題なのです。ボクシングは生涯の試合数が減ったので最近はみられていないようです。しかし、脳振盪あるいは頭への衝撃を繰り返す事がある他のスポーツ(主にコンタクトスポーツ)で、同じような障害を起こす事が知られ、今は「慢性外傷性脳症」と言われています。アルツハイマー病のような認知障害だけでなく、うつ状態などの心理学的トラブルや酔っ払いのようなフラフラ、そして、頭痛や不眠症などの状況などが知られています。

問題なのは、これらが一線を退いた後に起きるので途中で気がつくことができにくいこと、そして、一旦症状が出始めると戻らないことです。

繰り返しが危ないわけですから、アスリートは自分の起きた脳振盪のエピソードの数をしっかりと把握する事が重要ですね。

また、脳振盪を被った場合には、段階的に現場に復帰するのが良い訳ですが(JFA HP参照)、この目的はこの慢性外傷性脳症を早めに見つけたいと思っているからです。段階の途中で運動強度を上げた時に、頭痛やめまいが起きたり、どんなに休息しても頭痛やぼーっとした感じが取れないようなら考えものです。自分のかけがえのない将来をよく考えたほうがいいと思いますので、周囲のスタッフとよく相談しましょう。

 

ヘッディングを繰り返すとまずいのか?

サッカーでヘッディングしすぎると認知症になると言う報告が1990年代にありました。そうであるなら、ジュニアから育成されているアスリートは将来がとても不安です。ヘッディングの繰り返しで慢性外傷性脳症を起こしているのでは?ということですね。

しかし、ヘッディングがそもそも脳振盪を起こしているかが問題で、事実ははっきりとしていないです。今のところでは目的を持ったヘッディングは問題ないのではと思っています。なぜなら、その時は首が頭をしっかりと支えてくれているから、脳はあまり揺すられないからだと思います。でも、女性、ジュニアでは普通のヘッディングでも脳が結構揺すられるという研究結果が報告されています。海外でもジュニアのヘッディングは禁止している国もあります。世界の潮流からすると慎重にしておく事(回数を減らすこと)は悪くはないと思います、何しろ慢性外傷性脳症を起こしたら、もう戻らないですから。