認知症

僕は認知症治療の専門家ではないのですが、脳を扱っていますし、仕組みも普通の医者より全然知っていると思いますので、すこしお役に立てないかと思っています。

とはいうものの、細かい話は専門の先生やサイトにお任せするとして、以下に、2019年に行ったある講演の話の記録をそのまま掲載します。

口語調で申し訳ありませんが、気軽に読み流してください。

 

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認知症にならないためには

 

認知症は、僕もあまり詳しくないのですが、一応脳外科なので知っているので、少しお話しいたします。

認知症のうちの65%くらいはアルツハイマー病です。ADと略しますが、老人斑といってアミロイドβタンパクというのが脳の中にたまってきてしまう病気です。実を言うと、年をとったからなるのではなく、若いころからみんな段々溜まってきているのです。たまるスピードとか個人差があるということですが、発症頻度を見ていくと、ひとえに年齢が上がれば上がるほどADにはなりやすいんです。だから、加齢を最大の危険因子とした病的な老化だというふうに、アルツハイマー(AD)は言われています。

 皆さんが一番聞きたいと思うアルツハイマー型認知症の予防ですが、結論から言うと、加齢が一番の危険因子で、絶対的なものはまだ無いのです。無いのですが、幾つかいいと言われている食生活の因子があって、全部それをやっていると多少はADになる確率が減るらしいです。ただ、全部というのはなかなかできないのですね。医者が出す薬は、アリセプト(ドネペジル)って言うのですけれど、本当に効くのかと言われたら、正直言って、物忘れみたいなものには効かないですね。フランスでは、最近、薬として保険がカバーしなくなったんだと思います。

 以前、アミロイドβタンパクのワクチン療法というのができたのですけれど、ワクチンを打ったら、かえって脳炎になっちゃって死にかけちゃったという話があって、ちっとも効かないんですね。

 僕たちがあえて工夫すると何なのかというと、先程お話しをした動脈硬化ととても関係があるものだから、コレステロールを下げるお薬でスタチン系のコレステロールを下げるお薬、とても有名な薬で皆さんも飲んでおられる方が結構いらっしゃるのではないかと思うんですけど、それは割といいんじゃないかと言われています。

 ただ糖尿病がある人は2倍のリスクがあると言われていますので、糖尿病は絶対コントロールしなくてはいけません。高血圧の人は、中年のときに高血圧を放っておくといけないと言われていますので注意しなくてはいけません。肥満は、特に女性は高齢になって太るとまずいらしいという、これは明らかなデータとして出ているということらしいので、注意が必要ですね。

 結局は糖尿病、高血圧、肥満ということがすごく関係しているということですね。日本人はアルツハイマー病って少ないのですけれど、日本人がハワイに移民して、魚中心から肉中心の食生活に変わったら、アメリカ人並みのADの頻度になってしまったという話があるのです。ですから、DNAは関係なくて、結局は魚中心の生活から肉中心の生活の生活になったら、起きちゃうんだということですね。だから、食生活がかなり関係していることは事実です。

 よく勧められているのはDHAがいいと言われていますね。青身魚の背脂に豊富に含まれているらしいのですが、イワシやマグロやトロもいいけれど、ブリやサバ、サンマがいいと言われています。当然ですけれど生の方がいいのですが、生はアニサキスがあるので恐いんですけどね。

 あとは、イメージ的には地中海料理がかなりいいと言われています。サフランがいいわけじゃないんですけれど、ともかくオリーブオイルを使っていて、お肉じゃなくて、魚さんが多くて野菜とかも入っているということで、地中海料理がいいらしいということです。

 あとは、面白いのですけれど、インド人は70歳以上だと欧米人に比べて4分の1くらいしかアルツハイマーがいないんですってね。ウコンの成分なんですけど、クルクミン、粉だとターメリックと呼んでいますけど、それがどうもいいらしいと言われています。

飲み物でいいと言われているのは、週に4杯から6杯の緑茶を飲んでいると結構いいらしいと言われていますが、一方で紅茶やウーロン茶は発酵しているから全然効かないらしいです。アルコールは、飲むならば赤ワインがいいと。3杯くらい飲んでいると結構半減すると言われています。ポリフェノールのせいだろうと言われています。タバコはよくないですね。

 よく言われているビタミンCとかビタミンEとかカロチンというのは、50%くらい発症率を減らすと言われていますけれどこれは余り定かじゃないらしいです。緑黄野菜の色素系統も、どこまで正しいかどうか分からないし、ビタミンB1、2はどうでしょう?葉酸は多少関係あるかといわれていますが。

 最近、アンチエイジングでサーチュイン遺伝子と言って老化しない遺伝子というのがのスイッチが入れるかどうかというのが有名ですけれど、サーチュイン遺伝子で有名なのがレスベラトロールというものです。赤ワインからレスベラトロールはとれるんですけど、赤ワインだと毎日3本くらい飲まないとこれに足りないらしいので、現実的ではありませんね。他のサプリとしてはルテインと言われるものや先ほどのDHAとEPAが入っているようなものです。DHAとEPAを組み合わせた薬は処方薬としてもあるものですから、医者の中では結構評判がいい薬です。

 日常生活では、生活していくうえで頭をよく使っていると割といいだろうと言われています。本を読んだり、社会的交流があった方が良いと言われています。あとは、有酸素運動はとてもいいらしいです。昼寝も割といいらしい。妻がガミガミだと夫はADになりやすいと、これは本当かどうか知らないんですけど、こういう話もあるらしいです。

僕は、検査と体重はたまにチェックしています。血液検査は3~4か月に一度、MRIは1年に1回やろうかと思っています。あとは、ともかく歩くようにしています。有酸素運動をやろうかなと思っています。階段を上り下りしていますが、下りは膝を痛めるのでやらない方がいいと思います。

 食生活としては、僕は肉が好きなんですけど、肉を食べるなら、その前に野菜を食べようかなと思っていて、さらに、肉を食べるときには脂身を残すようにと思っています。ま、DHAやEPAの観点からすると、回転寿司で青味魚がいいかなと思っています。

 食事は、ご飯や炭水化物がいけないということはないのですが、残すなら炭水化物を残すようにしておこうかなと思っています。パンを食べるならばバターをつけないとか、マーガリンも本当はよくない。ですからオリーブオイルで食べるのが一番いいのかなと思っています。

 あと、ビールは1杯までにしておいて、あとはワインをほどほどに飲もうかなと思っています。自分の薬は、オキュバイトといって、ルテインが入っているものと、さっき言った医者が結構好んでいるDHAとEPAのものと、コエンザイムQ10が入っている薬、そして、さっきスタチンと言いましたけど、コレステロールを下げるお薬です。

 健康寿命を謳歌したいなと思って、最後に私が行なっていることをお話させていただきました。どうも長い時間、ご清聴ありがとうございました。